[鳥インフルエンザ対策についての提言] [鳥インフルエンザ対策に関する要望書]

あひるネットワークとして、下記の提言及び要望書を関係機関へ提出いたしました。

鳥インフルエンザワクチンの使用認可、家畜伝染病予防法の解釈と運用の見直し、消毒薬の使用の強要防止について提言します。

鳥インフルエンザ対策についての提言

私たちは、アヒルや鶏などの家禽を、愛玩動物(=家族の一員)として、大切に飼っています。国内での発生の無かった鳥インフルエンザが、79年ぶりに再び猛威を振るい始めた現在、養鶏を生業とする方々だけでなく、一般市民であるペット愛好家にも、その脅威が迫っています。

  1. 鳥インフルエンザワクチンの使用認可を急いでください。大分での、ペットとして飼育されていたチャボの感染は、密集した飼育舎で産業動物として飼われているブロイラーや採卵用鶏と違って、飼い主が愛情を込めてきめ細かい世話をしている愛玩動物にも感染の危険があることを示しました。同時に、感染鶏の飼育舎には入れられず、庭で放し飼いになっていたアヒルが、一次検査で陰性の結果が出ていたにもかかわらず「擬似患畜」として殺処分になるという、われわれにとっては衝撃的な結果になりました。卵の状態から大切に育ててきた鶏が原因もわからないまま感染・死亡しただけも飼い主には悲痛な出来事です。その上簡易検査の結果、感染が確認されていないアヒルまでが殺処分されたことに、家禽をペットとする私たちは大変な危機感を感じています。 養鶏業者をはじめとする関係者から、これ以上の感染拡大を止めるため、鳥インフルエンザワクチンの使用認可に向けた動きが出ているにもかかわらず、国は未だ回答を先延ばしし、感染が起きてしまった地域での処置に大量の人力と費用を費やしています。発生後の処置に莫大な費用をかけるより、防疫に効率的なワクチンプログラムの策定で発症をおさえる方が、費用に対する効果の面でも有利であることは明白です。
    これに対し、農水省は「現時点での使用は適切ではない」(平成16年3月10日付「国内における高病原性鳥インフルエンザに対する農林水産省の取り組みについて」)としていますが、平成16年2月2-3日の FAO(注1)、OIE(注2)、 WHO(注3)による鳥インフルエンザ制御に関する専門家諮問会議における結論および提言では、「殺処分による一掃」の他に「生物安全保障の強化、ワクチン接種、監視を含む対策が、家禽類における感染を制御し根絶するうえで、重要な方法である」とされています。(これら、第三者機関からの提言を無視してまで、ワクチンを認可しないのは、感染拡大防止対策の成果を低下させる原因になっていると考えます。
    (注1:国際連合食料農業機関  注2:国際獣疫事務局   注3:世界保健機関)

    ワクチンが認可された場合、接種後の監視(ワクチンが効いているか、ウイルスがいないか)をきちんとしないと、感染に気づかない人や隠す人が出て危険だという意見もありますが、野鳥であるカラスにまで感染が広がった現在、摘発淘汰で目下の家禽の感染拡大が止まったとしても、翌年大陸より渡り鳥がウイルスを持って飛んでくる可能性は否定できず、それが元で再発生することが懸念されます。もはや、ワクチンで感染拡大を抑えることを最優先課題とすべき時です。

    ワクチンによる発症抑制は、日本で改良され、天然記念物に指定されている各種和鶏を絶滅から救う為にも早期に実施されるべきです。また、アヒル・合鴨類も、合鴨農法に使われる小型種、鴨料理に使われる肉用種など、日本独自の発達を遂げています。日本の風土に適応したこれらの品種は、昔ながらの飼育法で、薬剤等に頼らずに丈夫に育ちます。近隣での発生を理由に、これらの貴重な品種が全滅させられることがあるとしたら、日本の文化にとっても大きな損失です。日本にいる家禽は、肉や卵の大量生産のために輸入された品種ばかりではありません。多くの在来種は、一般家庭で愛玩用・観賞用に飼育されているのです。養鶏業を生業とされる方へ補償等を考えるだけでなく、愛玩用の家禽の安全策にも目を向けていただきたいと思います。

  2. 家畜伝染病予防法の解釈と運用を見直してください。私たちはペット愛好家として、「擬似患畜」とされた動物がすべて殺処分になってしまう現状を憂慮しています。家畜伝染病予防法17条1項では、「都道府県知事は、家畜伝染病のまん延を防止するため必要があるとき、次に掲げる家畜の所有者に期限を定めて当該家畜を殺すべき旨を命ずることができる。」とされています。
    これについて、私たちは
    1. 殺処分は、「まん延を防止するため必要があるとき」に限られるべきであり、まん延を防止するための必要がなければ、飼い主に処分を迫ることを避けるべきである。
    2. 知事は「処分を命じなければならない」のではなく「処分を命ずることができる」となっていて、知事の裁量に任せられていると考えられる。

    この2点により、一次検査結果が陰性である「擬似患畜」については、すべて殺処分とする現在の解釈を見直し、隔離した上で、治験を兼ねてヒト用抗ウィルス薬の投与をして予防・治療を試みることを選択できるようにと希望します。もちろん、経済上の理由から、治療にかかる費用が膨大になるであろう養鶏業者などは、従来通り殺処分による感染抑制を選ぶことができます。しかし、ペットとして飼育している人にとって、感染していないのに『家族の一員』が殺されてしまうことは理不尽であり、深い心の傷となってしまいます。
    動物愛護の点から考慮しても、科学的に感染が認められない場合は、疑いがあるというだけの理由でむやみに命を奪うことを止めてください。

  3. 消毒薬の使用を強要することを止めてください。最初の山口での鳥インフルエンザ発生以後、全国の養鶏場、動物園などで徹底した消毒が行われています。これまで薬剤散布などしたことの無い、一般家庭にも薬剤が配布され、学校などでも頻繁な消毒薬散布が行われています。しかし、使用されている薬剤は、一般論としてウィルスに対する効果があまり期待できないものもあり、例として、保健所などの指導で使用を勧められている逆性石鹸(オスバンなど)、両性界面活性剤(アストップなど)が挙げられます。
    鳥インフルエンザ対策で使用しているつもりが、ウィルスにはあまり効果が無いとしたら、ターゲットにしているインフルエンザウィルスはそのままで、他の有益な微生物は、頻繁な薬剤散布で全滅もしくは数を減らされてしまうことになります。この状態では,リサージェンス(薬剤の使用で有益な微生物を絶やしてしまい、有害なものが異常多発生すること)が起きる可能性があります。鳥インフルエンザウィルスの場合、増殖する間に、危険な変異が起こることも考えられます。
    また、薬剤によっては、散布の際の長期の吸入によって、散布を実施した人間の皮膚や粘膜のびらんを起こすことがあり、特に薬剤の知識の少ない一般家庭においては、使用に当たって消毒環境の換気や防護などまで指導する必要があります。 発生地域で、効果のある消毒薬を撒くのは必要です。しかし、それ以外の場所では、薬剤を含まない流水で、頻繁に洗い流して細菌類の数を全体的に減らす方が、効果の期待できない薬剤を気休めに乱用するより、安全で、しかも自然界のバランスを崩す心配が少なくて済みます。

    この度、全国一斉消毒の呼びかけが、各自治体から出されましたが、千葉県の配布物を例にとると、各自で用意するとされている薬剤の中には、強力すぎて慎重な使用が求められるクレゾールや、あまりインフルエンザウィルスには効き目がないとされる逆性石鹸などが挙がっています。それらの薬剤が、専門知識の無い一般市民に乱用されては、環境破壊を起こしかねません。そのような事態に陥ること防ぐため、薬剤の使用を強要する指導を、関係機関が改めるよう、強くお願いいたします。

平成16年3月13日
あひるネットワーク

鳥インフルエンザ対策として、早急に商業利用の家畜(鶏やアヒル・アイガモ等も含む)へのワクチン及び治療薬の開発・接種の認可、そして愛護動物としての鶏やアヒル等についても、任意にワクチン接種及び治療ができるよう要望いたします。

鳥インフルエンザ対策に関する要望書

 鳥インフルエンザ対策として、早急に商業利用の家畜(鶏やアヒル・アイガモ等も含む)へのワクチン及び治療薬の開発・接種の認可、そして愛護動物としての鶏やアヒル等についても、任意にワクチン接種及び治療ができるよう要望いたします。

<鳥インフルエンザの脅威>
私たちは、アヒルや鶏などの家禽を、愛護動物(=ペット、家族の一員)として、大切に飼育しています。
1925年以来国内での発生の無かった鳥インフルエンザが、再び猛威を振るい始めた現在、養鶏を生業とする方たちだけでなく、一般市民である私たちにも、その脅威が迫ってきています。
大分でのチャボの感染は、密集した飼育舎で飼育されていたブロイラーや、採卵用鶏と異なる環境で生活している私たちの大切な愛護動物にも感染の危険があることを示し、同時に、飼育舎には入れられずに、庭で放し飼いになっていたアヒルが、一次検査で陰性の結果が出ていたにもかかわらず「擬似患畜」として殺処分になるという、痛ましい結果となりました。
大切に育ててきたペットが、原因もわからないまま感染・死亡しただけでも飼主にとっては、悲痛な出来事です、その上感染が確認されていないアヒルの命までが奪われたことは、同じ家禽をペットとして飼育している私たちにとって、他人事とは思えない衝撃的な出来事でした。

<「患畜」や「擬似患畜」への対応>
私たちは、「患畜」や「擬似患畜」とされた動物がすべて殺処分になってしまう現状を心配しています。
彼ら(愛護動物)は「家畜」ではなく「家族」です。動物愛護の精神からも、最大限の配慮をいただきたいのです。
「患畜」や「擬似患畜」を例外なく、殺処分とする現在の解釈・運用を見直し、隔離した上で、治験を兼ねて、ヒト用抗ウィルス薬の投与をして予防・治療を試みることがなどが選択できるようにしていただきたいのです。

「私たちにとって」彼らは大切な「家族」なのです。飼主や家族に、消し去ることのできない深い心の傷を与えるということをご理解いただきたいのです。

<ワクチン接種の必要性>
平成16年2月2-3日の国際連合食料農業機関(FAO)/国際獣疫事務局(OIE)/世界保健機関(WHO)による鳥インフルエンザ制御に関する専門家諮問会議における結論および提言には、「殺処分による一掃、生物安全保障の強化、ワクチン接種、監視を含む対策が、家禽類における感染を制御し根絶するうえで、重要な方法である」と明言されおり、メキシコやグアテマラ、イタリアなど海外での使用実績と効果は専門家によっても確認されています。
養鶏業者をはじめとする関係者から、これ以上の感染拡大を防ぐため、鳥インフルエンザワクチンの使用認可に向けた動きが出ています。
感染が起きてしまった地域での処置に莫大な費用をかけるより、ワクチン接種による発症の防止をおこなう方が費用対効果の面からも断然有利ではないのでしょうか。

<在来種の維持>
ワクチンによる発症抑制は、日本で改良され、天然記念物に指定されている各種和鶏等を絶滅から救う為にも早期に実施されるべきと私たちは考えます。日本にいる鶏は、卵や肉の大量生産のための輸入種ばかりではありません。そして、アヒル・合鴨類も、合鴨農法に使われる小型種・鴨料理に使われる肉用種など、日本独自の発達を遂げています。日本の風土に適応したこれらの品種は、昔ながらの飼育法で、薬剤等に頼らずに丈夫に育てられています。近隣での発生を理由に、これらの貴重な品種が全滅させられるとしたら、日本の文化にとっても大きな損失になります。

平成16年3月13日
あひるネットワーク