宮城県石巻住吉公園雄アヒル保護 ガー 

宮城県石巻市の川岸にいる足の腫れたアヒル  フォームメールより投稿
2011/09/06


「宮城県石巻市の被災者です。川岸に足をけがしたあひるがいます。
あひるは震災前から川に生息していて、4~5年前から幼稚園で飼われていたものが脱走、野生化したものだとの近隣の情報です。

私は3月11日の被災から4日後にあひるに遭遇し、パンやソーセージを時々あげているものです。しばらく不在して石巻に戻ってくると、同じパンあげ人のおじさんからあひるのけがを知らされました。見た感じでは、人間でいうところの右足首がぷっくりと腫れていて、びっこをひいています。2本足で立つ事はできるようなので、骨折ではないかもしれません。

4日前から獣医さんに相談をして、ソーセージに抗生物質をいれて食べさせていますが、足の腫れはひきません。それに台風の影響でウミネコが増えて、薬入りのソーセージもうまくあげれなくなりました。
川も被災地なのでまだまだ環境が戻らないので、捕獲して怪我を治して、どこかでゆっくり余生を送ってもらいたいと思います。なんとか助けてもらうことは可能でしょうか?あひるという特殊な生き物なので詳しい生体もわかりません。一度ご連絡ください。」


あひるネットワークの返信 アヒルの生態を伝える。

「その獣医師さんは、直接その川にいるアヒルさんのところへ出向き診断されていますか?抗生物質は足の痛みを軽減できていると感じますが、腫れの症状はすぐに改善できないと思います。餌をあげている人、見守っている人、足を怪我しているという変化に気が付いてあげられる人、そこで暮らしているアヒルを取り巻く方たちのアヒルへの想いもありますよね。獣医師さんの指導の元、餌をあげている方たちとこのまま経過観察を続けていけるかもしれません。私たちあひるネットワークもアドバイス等、フォローしていきます。」

「その場所が被災後、水位が増量して安全な岸が無い、中ノ島が無い、とてもアヒルが住めるような環境ではないようなら移動が必要でしょう。アヒルの様子や周囲の環境を確認したいので、アヒルがいる場所の画像、アヒルの画像を数点送信ください。」


投稿者の方より           9/8

「獣医さんはアヒルを診ていません。患畜としても診たことがありません。飼っている猫たちがお世話になっていた先生です。石巻ではアヒルを診る先生は少ないと思います。捕獲して連れていかなければ診てくれません。私の独断で相談してアヒルの平均体重と平均身長から割り出した量の薬を無料でくれました。動物病院も被災しています。」

「半野生のアヒルを自然のままにしておくことが良いだろうとは私も思いますが、アヒルの生活環境がだいぶ壊れた石巻で、怪我をした姿をみると、なんとかならないものかと思ってしまうのです。アヒルを見守る人たちも特に面倒をみているわけではありません。避難所から通うおじさんと私の二人がメインでしょうか。私も仕事を得るために石巻にはずっとはおりません。これがアヒルを取り巻く現実です。石巻にいるあいだは経過観察を続けます。」


進行状況 9/9

投稿者の方は、被災した地で足を痛めて過ごしているアヒル君(画像より雄アヒルと判断)を「何とか安全な地で治療を受けながら暮らして欲しい」という気持ちで相談されています。第二次避難場所で石巻市に来ていて、アヒル君に出会ったこともわかりました。画像からは関節が腫れていることがわかり、片足を浮かせているのは趾瘤(シリュウ)症が悪化しているのかもしれないと想像しています。

[保護、新しい飼い主さん募集にあたりアヒル君の情報まとめ]

・川岸は広いがご飯を持っていくと側まで寄ってくる。

・アヒル君の移動範囲はほぼ決まっていて狭い。

・昼間ご飯を持っていくとウミネコや他の水鳥に取られてしまうので夕暮れに持っていっている。(ご飯、パン、菜っ葉ご飯、キャットフード他)
※パンや焚いたご飯は改善するとのこと

・毎日経過観察可能。

・投稿者の方は、東京で過ごすこともある。

・投稿者の親戚の方が、犬・猫専門の餌/薬/獣医さんの派遣、物資の提供に携わっていて、東京から石巻市へ向かうことがあり、輸送等依頼可能(土日メイン)

・保護時には、アヒルを保護した経験やアヒルに携わっている方の指示の元行いたい。


 


9/17 投稿者の方が、東京に滞在しているとのことでこれからの計画と、状況把握の為にお会いしました。

投稿者の方は、宮城県で仕事を持ち生活されていましたが、震災後仕事のこともあり東京での暮らしに切り替える予定でいられるようです。「アヒル君のことを見守られるのもあと僅かになるかもしれない。」とても心配そうな顔をされていました。

このアヒル君は、大きな災害の後全く生き物がいなくなった川に震災の4日後にひょっこりと現れ、1羽の雄カモと行動するようになり、その後ウミネコが2羽合流し暫くは4羽で共に行動していたようです。今でこそ多くのウミネコやカモが集まっていますが、その当時はとても生き物が暮らしていく状況ではなく、アヒル君はあまり水に入ろうとしなかったそうです。

今のアヒル君の状態は、足は腫れているが元気はある。ソーセージに入れて与えている抗生物質もやめる予定でいるとのこと。アヒル君の今現在の居場所を知る為に、紙に地図を書いてくださっていたときのこと、「住吉公園」という公園名が出てきました。

住吉公園?

「震災後にどうやって戻ってきたのか??住吉公園で暮らしていたアヒルがひょっこり戻ってきた。」という、新聞のネット記事を思い出しました。伺ってみると何と?!そのアヒル君とこの川にいるアヒル君は同一アヒル君だと判明しました。毎日新聞のネット記事だと「二週間後」と記載されていますが、他の方のブログ記事を確認すると、やはり投稿者の方が仰っていたとおりの震災の4日後となっています。

(参照記事毎日jpより※2013年現在 記事が期限切れに。
毎日新聞さんへ記事復活の問い合わせをしましたが復活ならず。

Photo

投稿者さんから受け取っていた画像の風景と、この住吉公園に戻ってきたアヒル君が記載された記事の風景は同じでした。

あの油と泥にまみれて被災した街を眺めていたアヒル君なんだ。
今も投稿者の方を含め、多くの方に見守られまた勇気づけている。

海の側にいながら、あの大きな災害を乗り越え、再び住吉公園に戻ってきたというアヒル君を何とか復興のシンボルアヒル君として、石巻市の安全な場所で飼い主に飼われ暮らしていくことはできないだろうか・・・?

保護になるか?
石巻市で過ごしていくのか?

市役所や石巻市長さんへこの現状を知って貰おうと考えていましたが、実際に石巻動物救護センターでボランティアをされていた三重県の会員からの報告を伺うと、人間の暮らしもままならない現状で、近隣の方たちの庭先で飼うなどということは、やはり大変無理があると感じました。

またアヒル君の画像をみた会員の方より、羽根が下がっていることが気になると一報を受けています。公園のアヒル保護に関わってきたので、アヒルたちは野外の鳥(鳩)から肺炎の一種の病気に感染しているケースが多い。このアヒル君はウミネコから感染しているかもしれない。


三重県の会員さんより 9/23

ボランティアで関わっていた石巻動物救護センターのスタッフと連絡を取り合い、保護→治療→収容という流れで、現地でアヒルに携われるスタッフたちへお願いすることの報告あり。


投稿者の方より 画像 9/23

台風で増水した川にも関わらず、アヒル君は頑張っていました。流されずに住吉公園付近へ留まっています。足の腫れは以前よりも酷くなっているとの連絡あり。


投稿者の方より 9/24 

昼頃、救護センターの方2名とガーコ君へご飯をあげる。救護センターの2名の方からも手からご飯を食べていたと報告あり。

保護日までの経過

「保護(捕まえる)できるかもしれない。」が、捕獲時に取り逃がした場合、二度と近づかなくなるのではないか?と心配されていました。

「保護経験者の方がいた方がよい。」との要請あり。

救護センターでの一時保護は、救護センターが閉鎖される9月末までと一時保護場所も犬や猫と同じ室内となり、アヒルが落ち着けるかどうかとの意見もあり、現地の事情やガーコ君の状態をすべて把握できていませんでしたが、もし救護センターの方が保護時にお手伝いしてくださるのなら、9月中しかないとも思えてきました。

急遽宮城県石巻市へ向かう 9/26

急遽予定を合わせ石巻へ向かいました。保護に携われる時間は僅かしかありません。慣れていない人たちからもご飯を貰いに寄ってくることと、手からご飯を食べること。またその場所が広い岸辺という情報で、人数がいれば取り逃がすことはないだろうと判断していました。

でもその日その時と状況が違うということも、今までの経験でわかっていました。川も大きく、アヒル君の行動範囲も広い。

到着した頃、ガーコの居場所は広い川岸ではなくすぐに逃げ込めるヘドロのような土の付いた滑り易い狭いコンクリートの土手でした。   焦ってこの場所で保護を試みても水に飛び込んでしまう。そう判断して、川岸へ移動するのを待つことに・・・・

救護センターの獣医師さんは、ガーコの足の腫れた部分を外診され「骨折してその部分が固まってしまっているかもしれない。」と仰っていました。座っていることが多くなったというガーコ君、足の病気が悪化しているのかもしれない。  抗生物質を入れたウインナーでおびき寄せる作戦です。

ウインナーはガーコ君の大好物  一時間後、広い川岸へ向かうとガーコ君がいました。

「いつもはもっと岸側に来ているのに!」投稿者さんがつぶやきます。

これではすぐに川へ逃げられてしまいます。

投稿者さんの姿を見て、ガーコ君が寄ってきました。 宮永もウインナーを持ちガーコ君の側まで近寄ります。投稿者の方は水辺側へ周り、

もうこのチャンスを逃したら、水に入って泳いで行ってしまう・・・

立ち上がった宮永にガーコ君は咄嗟に水辺へ向かい翼を広げ逃げ出しました。

飛び掛かり保護(捕獲)。

何度経験してもこれは捕獲だ。
アヒルにとってはとても怖い瞬間だと思う。

だからチャンスは数回もない。

捕まえたガーコ君を素早くケージに入れる。

「ガーコよかったね!ガーコ!」

そう叫んでいる投稿者さんの、元気になってもらいたいという気持ちが伝わってきました。   被災地を訪れ津波の恐ろしさを目の当たりにしました。
ガーコ君のいる北上川の住吉公園付近もコンクリートが削られたり、石碑がもぎ取られたままの状態です。

あの日、ガーコ君はどうやって逃げたの?

この大きな川が溢れかえり、周囲の建物はえぐられ流されるほど威力のある津波にどうやって耐えていたの?

みんなあなたに聞きたいのよ・・・

ケージに入れられたガーコ君は、
「フーフー」と威嚇していた。


診断結果とこれから 9/27

神奈川県に戻りガーコの診断結果を水上先生(アヒル飼いになるの医療監修獣医師さん)の仰ったことを元に報告。

体重:3.4㌔

糞便検査:トリコモナス症がみられるが、「食欲がない」「下痢をしている」などの症状がなければ経過観察でよい。


腫瘍なのか?骨肉腫なのか?関節炎なのか?細胞を取って調べないと結果はでない。
プヨプヨしているのが気になる。

この腫れた患部を取り除くということは、足を切断することになる。
腫れの始まった頃から診ていれば、治療を進められたかもしれないがもう段階がない。治療は、抗生剤(進行を止める)(痛みやわずらわしさを取り除く)など。


レントゲンより肺炎像がみられる
普通気嚢が黒く、肺は白く映るが全体的に白く差がない。

肺炎の可能性がある。マイコプラズマなら鼻水、くしゃみといった症状が出る。
暫く、他のアヒルとは一緒にしないよう注意する。

脾臓
脾臓が腫れている。

床ずれ
血が出ている。
ジクジクしている。

足は治療の見込みがなく、手術をしたら病名はハッキリするかもしれないが治らない。足を切断してしまうと立てなくなり、床ずれはもっと悪化してしまうことが想像できる。

抗生剤を一ヶ月投与し、容態の様子をみることとなりました。
抗生剤には、バイトル50(錠剤)とメタカム(シロップタイプ)が処方されています。

足の他にも病気を抱え、ガーコはしんどくて座っていることが多くなってきたのだと思います。赤くカサブタになり、ジクジクと出血している床ずれ具合がその進行を物語っています。

 

ガーコ君の居場所を作成。

住吉公園北上川の1/100000位にもならないプラフネの水場ですが・・・
( ´-`;

近づくと逃げようと緑のネットに体当たりしていたが、
家に入り様子を見ていると、zoofoodをバクバクと食べ、プラフネの水を飲み、ゴシゴシと羽繕いそして、大きく背伸びをして羽ばたきをするガーコ君。

リラックスできたかな?

足は治らないけど、痛みや腫れは和らいでくるよ。

大震災と台風を乗り越えたスーパーアヒルのガーコ。

長生きして欲しい。みんなの願いだよ。

(住吉公園周辺への報告)

・ガーコのいた北上川交番に保護の報告
・ガーコを見守って来た方たちへの報告
・保護報告を住吉土手、中州中央にある電柱へ貼り付け

 

その後のガーの様子(あたしはあひる。カテゴリー、ガー)

ガーは2014年9月12日に天国へ。ガーを支えてきてくださったあひるネットワークの皆様や、募金をしてくださった方々に感謝致します。

宮永(西田弥生)