高病原性へはニワトリで変化

水鳥がもつ病原性のないH5亜型のインフルエンザウイルスを実験的にニワトリに接種していくと、やがて種の壁を越えニワトリに感染し、効率よく増殖できるようになります。

このようにウイルスはニワトリに対する病原性が低い(低病原性インフルエンザ)のですが、ニワトリで感染が繰り返すうち、やがてはニワトリを殺すような強い病原性をもつ高病原性ウイルスに変異します。

これと同じことが野外環境で起こり、水鳥由来のインフルエンザウイルスが養鶏場などのニワトリの間で感染を繰り返し高病原性の鳥インフルエンザウイルスが出現したと考えられています。

野鳥が高病原性鳥インフルエンザで死亡するのは、ニワトリから野外に漏れ出したウイルスに感染して病気になったためと考えられています。

野鳥では種によって高病原性ウイルスへの抵抗性にちがいがあり、自然宿主のカモ類などでは、一定の抵抗性を示す種類がいることもわかっています。しかし、カモと同じ水鳥の仲間であっても、ハクチョウの仲間では死亡例も数多く報告されています。

このように、高病原性のウイルスに感染しても野鳥の種類によって、はっきりとした症状を示さない場合(不顕性感染)や死に至る場合などその症状は多様です。

ニワトリが感染した場合、多くは1~2日後に発症し、元気がなくなったり、神経症状などが出たりした後、3~5日後程度で死亡します。また無症状で急死する例もある。


ニワトリが大量死するのは・・・?

高病原性鳥インフルエンザは多種多様な鳥に感染します。ニワトリだけではありません。感染のしやすさや・症状の出方・感染拡大の規模については、種や個体によって差があります。

野鳥の場合個体差(遺伝的な多様性)によって、ウイルスに対する感受性に多様性があると、感染を繰り返すうちに感受性の高い性質の個体が減少し、感受性の低い個体が相対的に増加することになります。

その結果、長い時間の経過とともにやがてはウイルスと宿主の共存という平衡関係(バランス関係)が生まれる可能性があります。

一方、家禽であるニワトリは遺伝的に比較的均一であることに加え、ウイルス感染で死亡しても同様の感受性をもつ個体が人為的に次々と供給されるため、ウイルスとの間に自然発生的に平衡関係が生まれる可能性は低いと考えられています。


宿主の多様性

野鳥には個体差があるので、ウイルスに感染するものもいれば感染しないものもいる。感染しても、弱いものは死に強いものが生き残る。最終的には淘汰され、感染しなかったものや感染しても抵抗力のあったものが生き残る。

遺伝子的に均一なニワトリは個体差が少ない。過密な生息環境も影響し一度感染したら一気に拡がり被害も大きくなる。


感染経路 ウイルスの排出は1~2週間

野鳥を殺すような高病原性の鳥インフルエンザウイルスでも、感染した個体が死亡したあと、ウイルスが次の鳥へと感染しなければ、やがてウイルスは感染性を失い、環境中から消えていきます。動物の体外では、高温・乾燥・日光に弱く、低温に強い。-70℃以下では数年間感染力を維持する。

ウイルスに感染し発症・死亡するような鳥の場合、発症により長距離移動がむずかしくなったり、死亡したりします。そうすることでウイルスの排出期間が短くなり、ウイルスが次の宿主へと感染する機会が減り、感染の拡大やスピードが抑えられる可能性もあります。

一方、不顕性感染(感染したにも関わらず発症しない)する鳥の場合、感染した個体は1~2週間にわたって、呼吸器や糞便からウイルスを排出し続けることがあります。この場合、その間に他の野鳥やニワトリなどの家禽に感染を広げてしまう運び屋になってしまうという問題もあります。

感染が確認された猛禽類、ハヤブサ、フクロウ、オオタカは感染した鳥を捕食したことが原因と考えられている。


野鳥間では水を介して伝播

ウイルスは宿主の細胞内でしか増えることができません。腸管や呼吸器で増えたウイルスは、糞便や唾液などと共に体外へ排出されますが、野外に放置された状態では、やがてウイルスは感染性を失います。動物の体外の環境下では、日光、紫外線、高温に対してそれほど強くないことも知られています。

野鳥間でのウイルスの伝播には水が重要な役割を果たしていると推察され、感染した個体がウイルスを含む糞便等を湖沼などの水中に排出し、この水を別の個体が飲むなどして感染が広がると考えられています。水温が低いほうが環境中でより長く感染性を維持します。


鳥インフルエンザの呼び方

高病原性鳥インフルエンザ 強毒タイプ 高病原性 H5またはH7

高病原性鳥インフルエンザ 弱毒タイプ 低病原性    

鳥インフルエンザ       低病原性 H5、H7以外

日本では、家禽(ニワトリ、アヒル、ウズラ、シチメンチョウ、キジ、ホロホロチョウ)にH5亜型および、H7亜型が認められた場合、その病原性にかかわらず、家畜伝染病(法定伝染病)として、すべて殺処分の対象となっている。家畜伝染予防法より