俺の名はガチャオ

俺の名はガチャオ

俺の名はガチャオ。
落二中のあひるだ。
今日も燦々と僕たちを照らす太陽を浴びながら、野田先生を待つ。
毎日、起きて水浴びと少しした後、落二の生徒が飯をくれるのを待つのだ。
その時「掃除」をしてくれるのが俺は不法侵入だと思っている。だが、俺の家から糞がなくなるのは嬉しいし飯もくれるのでほっとく。
そして、その後に野田先生がおはようと俺のもとに来てくれ、落二の生徒もいなくなり独りでのんびり日光浴を始める。
平凡な日々。
のんびり、のんびり。
いいだろ?
暖かい光と、先生の授業の声。
チャイムが終わりを告げると生徒が騒ぎ出す。
そんな平和を聞いて俺は今日も生きていく。
あぁ、時々は退屈で仕方ないが・・・。
それも全部、俺の生活だ。
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今日は新顔がやってきた。
ダブダブの制服からして一年生らしい。
一応あいさつはしたが通じたかはわからない。
でも触らせたりはしない。油断大敵って言うだろ?
信用できるまでは触らせない。
それが俺の“ポリシー”だっっっ。
あっ、野田先生。
「ガチャオ、お散歩行こうね。運動不足で最近太ってきたんじゃない。」
面倒くさいが・・・・ここにいるのも退屈だし行くか。
「クワァクワァ。そうだ。行こう。」
野田先生の後ろでゆっくり歩いていると生徒が来て。
「わー!!ついてきてるー!!」とか「すごーい!!」とか騒いだりするが
俺はそれどころじゃない!!体が重くて歩くのも一苦労だ。

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光陰光のごとし。
月日が経つのは早いものであっと言う間に--いや、俺がクワァと言う間にだが--
もう一年経ってしまった。
今日は新しいあひるが来た。
ぴーちゃんというらしいが、これがお嬢様でマナーってモノを知らない。
「ねぇねぇ。」
始まった・・・。
「なんだ。」
ピー子は俺のもとに近づいて来る。
その歩調は不安定で、『ひょっこ、ひょっこ』という音がぴったりだ。
「あれは誰?」「人っ?」---「主事さん。」
「池はあそこでいいの?」---「あそこ以外にどこにある。」
「トイレはどこ?」---「適当。」
「ていうか、ここはどこ?」---「・・・落二中。」
「落二中はどこなの?」---「ここ。」
「ふーん。」---「(一体、何がわかったんだ?)」
そのうち『私は誰?』と聞いてきそうな勢いで質問攻め。
しかも、タメ口!!
問題はここだ。俺の方が年上だよな?“先輩”だよな?
先輩には敬語を使うのは普通じゃないのか?!
「ていうかあんた誰?」---「(ハァー。それはこっちのセリフだ!!)」
まぁ俺は大人なので許してやろう。
お尻を振りながら池に向かうピー子を見ながら最近、日光浴していないなと思った。
ピー子は嫁というより孫という感じだった。
無邪気に俺を質問攻めにし、素直に俺の返答にうなづく。
俺が話しをすると一生懸命聴くし、俺の後ろをよくくっついてきた。
そういうのは悪い気分ではない。
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だが、問題が一つあった。それは俺の飯まで食うことだ。
「ガチャー、ピー子、飯だよ。」
めしー!!  若いってすばらしい。それはそれはすばらしく速い勢いで俺の飯まで食べようと
するピー子。
コラ!俺はピー子の真っ白い羽をめがけてくちばしでつついてやった。
結果は予想通り。ピー子は驚いて、池に逃げ込み俺は餌をゆっくり食うことができた。
何故か俺は野田先生にしかられ、何故か餌箱なるものが二つに増えた。
飯の量も増えたし。       ・・・・ラッキー。

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また、一年が過ぎた新顔だった一年生はもう三年生になっていた。
ピー子もここに大分慣れてきたらしく、よく職員室に侵入し一騒ぎ起こした。
最近俺は調子が悪い。
「年だね。」
ピー子に言われたがあえて無視。言い返せないだろ、それは。
最初はあまり気にしていなかったが、体調は悪くなるばかり。
「ガチャオ、はい。」
と差し出されたパンを飲み込むと口一杯に広がる薬の味。
薬はお世辞にもおいしいとは言えない。
そのうち、俺は動くことさえできなくなった。
動き回るピー子を見ながら俺はじっとしている。
「おいでよ。」
その言葉はピー子なりの優しさだった。
飯を食べるのは辛かったが俺は元気に振る舞った。あと少しだって分かったから。
「ガチャオ、頑張って。」
そう言って世話をしてくれる野田先生のためにも俺は元気でなくてはいけない。
「おいでよ。また、いろいろ教えてよ。」
そう言うピー子はどこか悲しげだった。
夜。
さっきまで冷たくなってきた風は今では止まった。
真っ暗な闇は大きなお布団になればいいのにと思う。
何故か俺はぽかぽかして暖かい気持ちになった。

目を閉じて思い出すのは、お日様の下でじっと野田先生を待つ俺。
繰り返しの毎日、でも幸せな日々。
ピー子が来てからは二人で野田先生を待った。
でも、ピー子はすぐに立ち上がって行ったり来たりして・・・・。

少し懐かしくなって、口から笑みがこぼれた。
そう言えばあの頃からふたりで楽しかった気がする。
眠っているピー子をそっと見て、ごめんなと呟いた。
ひとりにさせちまってごめんな。
でも、口から出るのは空気だけだった。
よし、そろそろ寝よう。
目を閉じる。

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暖かい光。
野田先生、ピー子、落二の生徒達。
チャイムと授業中の先生の声。
時々、飯を食べに来るすずめ達。
全部、俺の生活の中にある。

俺の名はガチャオ。
落二中のあひるだ。


『ガチャオのお友達が欲しいです』との内容で、落合二中学校の野田先生からメールが届いたのは、2003年の5月のことでした。

> 一年半前まで2代目「ガーコ」と二羽でいたのですが、
> 彼女が死んでから、ひとりでかわいそうな「ガチャオ」(9年ぐらいいるそうです。)
> に友達がいればと思っています。
> あなたのサイトの中で、里親の話が出ていたと思います。
> 私たちの学校にきてくれるアヒルがいたらよろしくお願いいたします。

中学校で飼育されている9歳の雄アヒルが寂しそうで仲間を募集したいとの内容でした。その頃、飼っていたアヒルをどうしても手放さなくてはいけなくなり、里親さんを探していた方がいました。

アヒルは、ぴーちゃん。(雌北京ダック)

その後お話は進み、ガチャオとぴーちゃんのお見合いも成功(^-^)
ぴーちゃんはガチャオ君のいる落二中へお嫁さんへいくことになりました。

その後、2004年10月にガチャオ君が永眠。

再び野田先生より今度はぴーちゃんのお婿さんの募集があり、2005年の3月に川で保護されたコロ君が中学校へ迎えられました。

そのコロ君がお婿さんへいく経緯より、野田先生から中学校でアヒル達がどう過ごしてきたか詳しく伝えられたのです。

上記の“俺の名はガチャオ”は、中学校でずっとアヒルの世話をしてきた生徒さんが書かれたものです。中学校では、ガチャオ君とぴーちゃんをお世話してくれる仲間がたくさん増え、お世話係は、『ガチャぴークラブ』と名付けられ、『ガチャぴークラブだより』という校内新聞が発行されていました。


胸が熱くなるのは、なぜだろう・・・?

アヒルの・・・ガチャオの気持ちがすごく伝わってくるからだろうか、

2005.4.11

 

 

 

 

 

 

※落合二中の生徒さん達は、新宿区平成16年度第2回幼児・児童・生徒表彰で
ボランティア活動の功績(アヒルの飼育活動を3年間継続)を受賞されています※

 

2005.3.26 落合二中で ぴーちゃん(雌先住アヒル)とコロ君 画像提供:korosukeさん